今月のロンリネス処方箋 #5

2019年4月24日

走馬灯のために

こんばんは、春ですね。黄身子です。

出会いの季節というけど、始まりはいつも不安ととなりあわせにあるし、新しい私に簡単になれるわけじゃなく、出会いっていうチープにも聞こえる響き、距離感を測り続けてすりへるヒールでちょっと疲れちゃったりもしますね。

そんなとき、大事な人たちと初めて会った日のことを思い出しています。

そのとき見えなくても感じたものをあのときねって話せたらそんなに素敵なことってない。

まわりにたくさんの人がいるほうが良いとは思わないけど、いつかのために、この春の一瞬一瞬も大事に大事にしていけたら。

新しいストーリーが始まる季節、それ自体以上に素敵なことは、それが悲しい物語になっていた過去をかがやかせてくれることもあるっていうこと。

いまは不安に支配される日々でも、一緒にいる人によって貴女自身も変わっていく、そのすべてが本当であることも、また愛おしい事実。

次に来る特別な日のために代わり映えしない日を一生懸命過ごす貴女はきっとすてきだし、少しの勇気が歯車を動かし始めたりすると考えるだけでも、見慣れた風景が輝くはず。

張り切る必要も飾る必要もないのだけれど、春の陽気に期待はしたっていいじゃないって思います。

（黄身子）

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イラストレータ：黄身子（きみこ）さん／

1992年北海道生まれ。
京都大学卒業、東京藝術大学修了。

2016年より「自意識過剰と恋愛不適合をゆるコミカライズする」をテーマにTwitterなどで漫画&イラストを発表。ウェブメディア「AM」で「連絡まち子ちゃん」「姫たちのユウウツ」、フリーペーパー「メトロポリターナ」で「今日も恋する?アートガイド」を連載中。